私は中国で6年半ほど仕事をしていたことがあります。
中国語は現地に行ってから覚えましたが、漢字を使えばお互いに何となく意味が通じるという点で助かりました。
発音がわからなくても筆談で何とかなったことが多々ありました。
とはいえ、同じ漢字なのに全然意味が違うものもあるので要注意……。
というより、面白いです。
たとえば、「手紙」
中国語ではトイレットペーパーです!
他にも「爱人(愛人)」という言葉。
これは「配偶者」という意味です。
こうした例は笑い話ですみますが、仕事に関わることとなると、意味の取り違えは時にトラブルを招くこともあります。
今日はそんなお話です。
1.中国で電気のスイッチは「开关(開閉)」だが……
9月に中国へ赴任される方に向けて、中国語の研修を行っています。
中国語の研修といっても、ガッツリ語学研修をするというより、向こうでの仕事の進め方、現地でのコミュニケーションの取り方などをお伝えしている時間が多めです。
生徒さんは生産部門の方なので、職場で遭遇する単語を覚えてもらうようにしています。
そこで出てきたのが電気の「スイッチ」
中国語では「开关(開閉)」といいます。
たとえば、「灯りをつける」は「开灯(開灯)」
つまり、電気が流れている状態が「開」、電気の流れていない状態が「閉」となります。
これがです。
「電気が流れている、流れていない」と聞いて、電気回路が頭に浮かぶバリバリの電気技術者にとっては混乱のもと。
電気が流れている状態は、電気回路でいうと「閉じている」状態。
理科の教科書に載っていたのを覚えている方もいらっしゃるでしょう。
こういう回路。
この電気回路が頭に浮かぶ人にとっては
「電気が流れている」=「閉」
「電気が流れていない」=「開」
が常識なのです。
ところが中国語では、電気が流れる状態にするのが「開」、電気を流れない状態にするのが「閉」。
まったく真逆で、混乱してしまうということなのです。
「私は開閉と聞いても電気回路が頭に浮かばない人なので、スンナリ受け取れたけれど」と私が話すと、生徒さんも「私も浮かばないんで大丈夫」と笑っていました。
2.なぜ「開閉」で表現するのか
興味が湧いたので、電気の入り・切りのことを、どうして「開閉」で表現するのか調べてみました。すると、京都産業大学の平塚 徹先生が書かれた論文がありました。
明かりをつけることを多くの言語で 「明かりを開く」と言うのはなぜか
日本語では電気や明かりは「つける」 「消す」ですが、中国語に限らず、「開閉」で表現する言語は多くあるようです。論文では、電気を水と同じような流体に見立てて「蛇口を開ける・閉める」というところから「開閉」になったのではないか、といった内容が書かれていました。
ほんと「常識」はひとつではありませんね。
自分の知っていることが唯一無二の正解だと思っていると、思わぬトラブルに見舞われることになりかねないなと思います。
だからこそ、自分とは異なる分野、背景、立場の人との交流は大切にしたいものですね。
それでは、また。
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