肩書きに覚悟を持つ ― かつて「ライター」と言われることを全力で否定していた話

新年おめでとうございます。

年始から、大きな災害、事故が続きました。お見舞い申し上げます。

石川県は会社員時代に仕事で何度も訪れたことがあり、知り合いも多くいます。どうか、これから先の1年が明るいものとなりますように。

そして、改めまして、本年もどうぞよろしくお願い致します。

会社を辞めたあと、「肩書き迷子」になっていた

あなたの肩書きは何ですか。

肩書きと言っても、「○○会社△△部の課長」というものではありません。「私は何をする人です」という「旗」のようなもの。その「旗」を言葉にできていますか。

私は会社員時代は、「異なる立場の人たちを結びつけるインタープリターです」という「自己認識」を持っていました。

自分自身が専門外の仕事に就いて「言葉の意味がわからなかった経験」をしたり、転職をして「同じ業界なのに会社が違えば言葉も違う経験」をしたり、まったく考え方の違う中国で仕事をした経験をする中で、コミュニケーションの方法を試行錯誤してきたからです。

ところが、会社員を辞めて独立してから、すっかり「肩書き迷子」になりました。「何をしている人?」と聞かれても、自分自身が何をしたいのか、わからなかったからです。

色々やり散らかした挙句、「肩書きは『深谷百合子』でいいじゃん」と開き直ったこともあります。

そんな迷いの時期にいる頃、他の人からこう言われることが増えました。

「百合子さんはライターさんだよね」

ちょうど2年前の今頃です。

天狼院書店のライティングゼミで出す課題記事の掲載率が高くなり、ランキング上位に入ることが増えたからです。連載記事も書くようになっていました。

でも、私は「ライター」と言われるたびに背中がムズムズしていました。心の中で、「いやいや、違うから」と全力で否定していました。なぜなら、「有料で記事を書いたことがなかったから」です。

天狼院書店で掲載されたといっても、自分はあくまで「受講生」の立場。お金をもらって書いているわけではないので、自分から「ライター」とは名乗れませんでした。

人が「ライターだ」と言ってくれているんだから、そのまま受け取ったらいいのに……と今なら思います。でも、「職業」になっていないから名乗れない。当時はそんな思いが私を支配していました。

それから半年後に、有料記事を書かせてもらう機会を得て、ようやくプロフィールに「ライター」と書けるようになりました。
正直今でも、ほんの少しムズムズするのですが、実績うんぬんではなく、「私はライターだ」と名乗ることで、自分の中に「覚悟」ができたように思います。

肩書きに覚悟を持ったら、道が開けてきた

「私はライターだ」という覚悟を持つことは、記事を書き続ける動機になりました。そして記事を書き続けていると、「どうしたらそんな風に書けるの?」と聞かれることが増えてきました。「書けない」「伝わらない」という人たちの悩みを聞きながら、「私はどうやってできるようになってきたのだろう」と振り返る機会を得ました。

その「振り返り」をする中で、会社員時代の「異なる立場の人たちを結びつけるインタープリターです」という「自己認識」を思い出しました。
私は会社員時代から、「どうしたら伝わるか」をずっとテーマにしてきたことに気づいたのです。

専門的な内容をわかりやすく伝える。
外国人にもわかりやすく伝える。
考え方の違う部署同士が協力し合えるように伝える。

その「自分のテーマ」を思い出し、「本の企画にしてみよう」と言語化に挑戦しました。その企画に対して、周囲の方から磨きをかけて頂きました。そして、師と仰ぐ著者の山口拓朗先生から「難しい」を「易しい」に変える伝え方ナビゲーターと名付けて頂き、今があります。

「難しい」を「易しい」に変える

「難しい」を「易しい」に変える。この言葉を頂いたとき、「私はこの言葉に沿って活動をしていく」という覚悟ができました。ただ「言葉」を易しくするというだけでなく、「自分には難しいからできない、こわい」と挑戦を諦めている人に「こう考えれば簡単だよ」と伝えたいという想いがあります。

これからも私は「ライター」として活動します。書くことは私にとって「難しいを易しい」にする「手段」のひとつだからです。

自分が経験したことや他の人に話を聞かせて頂いたストーリーを書き、そのストーリーをひとつの「メタファー」として、「こんな考え方があるよ」「こんな乗り越え方もあるよ」というのを読者に伝え、問題解決に役立ててもらいたいというのが、私の「書く目的」です。

たとえば、「リーダーシップとは?」とリーダーシップ論を説明するのではなく、実際に現場でリーダーとして何かを乗り越えてきたストーリーを材料にして、リーダーシップについて考えたり、「自分ならどうするか」を考えてもらう機会をつくりたい。

来月出版する本は、「伝わる説明ができるようになるコツ」を100個集めた本ですが、ただ「説明のスキル」を伝える本ではありません。

こんな説明の仕方だと伝わらなかった。
でも、こう変えたら伝わった。

そんな事例を通して、「伝わるために何が大切か」を感じて頂ける本にしました。

もう1冊、4月出版予定の本も、様々なストーリーを紹介しながら、リーダーシップに悩む方の問題解決に役立てていただけるような本に仕上げている途中です。

「私はライターだ」と名乗ることをずっと躊躇していたままだったら、私はきっとどこかで書くことを諦めていたかもしれません。何の目的で書いているのか、自分に問うこともしなかったと思います。「お金をもらえるようになってから」と思って迷っていた時間が、ちょっともったいなかったなと思います。

バシっとハマる肩書きがすぐに思い浮かばなくても、人から「あなたってこういう人だよね」と言われたことをヒントにしたり、自分がやりたいと思っていることがあるのなら、思い切って名乗ってみてはどうでしょうか。

「私はこの肩書きで活動していくんだ」と決めてみると、取り組み方が変わります。

そして、「これをすることで、どうしたい?」と問い続けていくことで、段々としっくりくる言葉が見つかっていきます。

肩書きに悩んでいる方の参考になれば幸いです。

それでは、また。