「ダイバーシティ&インクルージョン」「女性活躍推進」など、言葉の理解の先にある必要なものに目を向けたい

先日、「実現したい未来で使っていたい言葉」を今から使おうという記事を書きました。

この記事の中で、「ジェンダーギャップ」とか「ダイバーシティ&インクルージョン」とか、そもそも言葉が抽象的で難しいという話をしました。これらの言葉は、一見カッコイイです。新しい概念を感じさせ、進化しそうな雰囲気も感じます。でも、そう思っているのは「伝える側」だけ。

本当に目指す姿を実現するときに大事なことは何かについて、今日は書いていきます。

「現場」にとっては、「たとえば、何をどうすればいいのか」「どんな状態を目指せばいいのか」の方が大事

記事を読んで下さった方から、「これらの概念が日本人の思想の中に存在しないゆえに、日本語に翻訳が不可能なのでしょうね」とのコメントを頂きました。私もその通りなのだろうなと思います。あてはまる日本語がなければ、そのまま使わざるを得ないとも思います。無理して日本語をあてはめようとすると、それはそれで余計に理解を難しくするでしょう。

こういう「今まで自分たちになかった考え方・概念」が入ってきたとき、私がいつも残念に思うのは、「○○とは」と「言葉の説明」に終始してしまうことです。

もちろん、言葉の背景にあるものをしっかり理解することは必要です。でも、実際にその考え方を取り入れて、変わっていかなければならない「現場」にとっては、「たとえば、何をどうすればいいのか」「どんな状態を目指せばいいのか」の方が大事。そうじゃありませんか。

私は会社員時代、工場の環境対策の仕事をしていました。「環境ISO」「CSR」「生物多様性」「SDGs」など、次々と新しい考え方や仕組みの導入を経験しました。そこで、言葉の説明や考え方の説明だけでは現場は誰も動いてくれないということを、嫌と言うほど経験しました。

言葉や考え方を説明するだけなのは、「このあとどうするかは、自分たちで考えて」と言っているようなものです。

現場からすれば「また何か面倒なことが増えたぞ」「やれって言われるから、仕方なくやっておくか」になってしまいます。

自分の会社だったら、たとえばこんなことができそうだ。
自分の部門だったら、こんなことから始めてみたらいいかも。

そんな風に、身近な行動レベルにまで噛み砕いて、「イメージできる形」にしなければ、「とりあえず制度をつくりました」みたいな形ばかりになりがちで、本当の意味での変化は起こりません。

用語の説明に割く時間がもったいない

最近、行政主催のセミナー、特に働き方改革や女性活躍推進に関するセミナーで、横文字が多い印象があります。「パーパス経営」「エンゲージメント」「ジョブクラフティング」「ダイバーシティ&インクルージョン」「エクイティ」……。

何それ? また新しいことを覚えなくちゃいけないの?

そんな気持ちにさせられます。

日本語にしてほしいというわけではありません。そもそも適切な日本語があるかどうかも不明です。

でも、セミナーの中で用語の説明に割いている時間がもったいない気持ちがしてしまいます。なぜなら、セミナーの目的は、用語を理解することではないからです。参加している企業や個人に、そうした新しい考え方を取り入れて実現してもらう具体的な行動を起こしてもらうこと。これがセミナーの目的のはず。

そのためには、欲しい未来が具体的にありありとイメージできるように説明する必要があります。

単なる事例紹介ではなく、「あなたの会社ならどうするか」「あなたならどうするか」と、自分に置き換えて具体的に考えてもらうことに時間を費やした方が、実りの多いセミナーになるのではないでしょうか。

言葉の先にあるものに目を向けて、説明の仕方も変えていきませんか。

それでは、また。