
「その会社が元気かどうかは、トップが言葉を届けているかどうかの違いではないか」
最近、そんなことを感じる機会が続いています。
自分たちの仕事が誰の、どんな役に立っているのか。
それを伝えるのがトップの仕事ではないかという話です。
■対価としてお金が振り込まれるだけではモチベーションが上がらない
三重県内にある家族で経営している小さな町工場を取材したときのことです。
その会社は私が勤めていたシャープの工場や自動車関連、ゲーム機関連の工場で生産に使う「治具」のパーツを製造していました。
「治具」とは、製品に組み込まれる部品ではなく、作業を簡単にしたり作業時間を減らしたり品質を安定させたりといった生産をサポートする役割を持つもの。
たとえばドリルで穴をあけるときに、いつも同じ位置に穴をあけられるように「ガイド」の役割を果たすものなどがあったりします。
身近なものでいえば、クッキーをつくるときの「型抜き」のようなイメージをしてもらえればと思います。
お客様から「こういうのを作ってほしい」と言われてつくるわけですが、お客様の工場で実際にどこでどんな風に使われているのかは、まったくわからないそうです。
「おかげで作業効率があがりました!」
なんていうフィードバックはなく、納品したら対価としてお金が振り込まれるだけ。
これではモチベーションってなかなか上がらないですよね。
この会社は、「治具」のパーツ製造だけでは、事業が先細りしていくと考え、自分たちが培ってきた技術を活かして片手で簡単にトイレットペーパーを切ることができるホルダーを開発し、今、販路を広げています。
これまでBtoBの仕事しかしてこなかったために、BtoCのビジネスは勝手が違っていて、最初は苦労したそうです。それでも、片手しか使えなくて困っていた人や乳幼児や介護の必要な人を抱えている人から
「こんなの欲しかったんです。ありがとう」
と、ものすごく感謝されたことが本当に嬉しかったと言います。
何度も試行錯誤を重ねて上手くいかないときが続いても、直接お客様から頂く感謝の言葉や自分たちの技術がどう役立っているのかを実感できることが、困難に挑み続ける原動力になっていると話してくれました。
■言葉の力が人の心に火を灯す
「お客様の顔が直接見えない」「お客様の声が直接届かない」、そういう仕事をしている人にも、「こういうところで、こんな風に役立っているんだ」というストーリーを、上の立場にいる人は伝えていかなければならないのではないか。
トップの話と言えば、中期計画の説明とか経営方針の説明とか、いかに業績を拡大していくかとか、目標を達成できていないところに対して檄を飛ばすだけになっていないでしょうか。
話を聞いてワクワクしたり、「よし、頑張ろう!」と心に火がつくような、そんなストーリーを語れる職場は生き生きとやる気に溢れているはずです。
お客様と直接話す機会の多い立場の人ほど、「お客様の声」を集め、社内に伝える。
お客様の立場にいる人も、ダメ出しのときだけフィードバックするのではなく、「何がどれだけ良くなったのか」良いフィードバックをする。
「そんな関係を築けたら、ものづくりの現場はもっと元気になるのではないかな」なんて感じました。
私自身も、「心に火がつく」ストーリーを集めて発信をしていくことで少しでも役に立つことが、これからの自分のやるべきことかなと思っている昨今です。
あなたの職場ではいかがですか。
「誰の、何の役に立っているか」が、ちゃんと伝わっていますか。
そして、提供された立場の人は、ちゃんと感謝を伝えていますか。
言葉の力が人の心に火を灯す世界が広がっていくといいなと思っています。
あなたのまわりでは、どんな言葉が、誰かを動かしているでしょうか。
それでは、また。
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