同じ前提を持たない相手に説明するコツ

コミュニケーションがうまくいかないとき、「前提が共有されていない」というのはよくある話です。

私たちはつい、「相手も自分と同じ考えだろう」 「言わなくてもわかるだろう」と思ってしまいがちです。ところが、相手と自分との間に前提が共有されていないために、「そんなはずでは」ということが起きてしまうのです。

今回は、「同じ前提を持っていない相手に伝えるためのコツ」についてのお話です。

1.中国で「日本の七夕」が伝わらなかった理由とは

「自分と同じ前提を持っていない相手に説明するのは難しい」
私がそう感じたのは、中国で暮らしていたときのことです。

当時私は、毎週中国人の先生から中国語を習っていました。テーマを決めて中国語で作文を書き、添削してもらっていたのです。

中国と日本の七夕の違いを説明しようと、私が「日本の七夕」について中国語で作文したときのことです。

「日本では、七夕の日には願い事を書いた短冊を笹に飾り付けます」
という日本語をそのまま中国語に訳しました。

これを読んで下さっている皆さんなら、情景が思い浮かぶと思います。

ところが、作文を添削してくれた中国人の先生はこう言ったのです。

「私は日本に住んだことがあるからわかるけれど、この文だと、日本の七夕を知らない中国人にはイメージができないです」

たとえば
「笹ってどれ位の大きさなの?」
「どこかに生えているものに、短冊を飾り付けるの?」
「飾り付けてどうするの?」
といった疑問が浮かんでくるのだそうです。

なぜなら、中国にはそうした習慣が無いからです。

2.相手の知っているものにたとえて説明する

日本の七夕飾りを説明しても、それを見たことのない人にはイメージができない。

それでは、どう説明したらいいのでしょうか。

中国人の先生と「中国にある似たようなもの」を探しました。そして、最終的にこんな感じの文になりました。

「中国のお寺では願い事を書いた赤いリボンを木にかけるでしょう? それと同じような感じで日本では七夕の日、人々は家に一枝の笹を用意してお願い事をする樹とし、願い事を書いた短冊を飾り付けます」

中国のお寺に行くと「吉祥平安」などと願い事が書かれた赤リボンが木にかけられています。

それをたとえに使って説明すると中国人はイメージしやすいということで、上記のような文章になったのです。

ずいぶんと回りくどく感じるけれども、ここまで説明しないと伝わらないのかと思いました。

この経験は、同じ前提を持たない相手に説明することの難しさを私に教えてくれました。

先日、京都のお寺に出かけたとき、ガイドの方が英語で外国人観光客に説明しているのを見かけました。

文化的な背景がまったく異なる外国人(とくに西洋人)に説明するのは、本当に大変なことだろうなと思いました。

「相手の知っていることの中から、これから説明しようとすることによく似たものを探して、たとえる」というプロセスが必要になりますね。

そのためにも、こちらも相手の国のことや文化、風習など知ろうとすることが大切です。

そしてこのことは、外国人に対してだけではなく、

年代が違う人
住む場所が違う人
働く環境が違う人
同じ社内でも違う部署で働く人
などなど

自分とは異なる環境、立場の人とのコミュニケーションにおいても同じなのです。

同じ日本人だから
同じ会社で働いているから
一緒に暮らしているから……。

そんな理由で「相手もわかっているはず」と思い込むと、伝えたはずなのに伝わっていないということが起こります。

ぜひ目の前の相手を知ろうとすることから始めてみることをオススメします。

それでは、また。


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