使う言葉が職場風土をつくっている

NHKで新たに始まった「新プロジェクトX」。ご覧になっている方もいらっしゃることと思います。

私の古巣であるシャープも、カメラ付き携帯電話の開発の回で登場しました。「弱小連合の下剋上」というストーリー、携帯電話のサイズを変えずにカメラをどう組み込むのか、50を超える不具合をどう解決していったのか……。

携わった人たちの熱い気持ち、じっと経過を見守った上司たち。なんだかちょっと、感傷的な気持ちになりながら見ていました。

プロジェクトXは、がけっぷちに追い込まれたところからの劇的V字回復を果たすというストーリーですし、そこに携わった人たちの熱い思いが伝わってくるので、見るとやっぱり胸が熱くなります。

一方で、番組に対しては、「登場するのは男性ばかり」とか、「飲みニケーションが変化のきっかけだった」とか、「ザ・昭和な感じで今の時代にそぐわない」など、いろいろな意見もあるようです。

そんな中、とくに企業のプロジェクトにおいて、ほぼ毎回気になる言葉が登場します。

それは、
「日陰の職場に追いやられた」
「社内から日陰の職場と揶揄されていた」
という言葉です。

言葉には「無意識の思い」が乗る

同じ会社なのに、「あの部署は日陰の部署」と言ってしまう組織って、どうなんだろう。
そこが引っかかるのです。

私も工場の中で「日陰」と言われる部署にいました。
工場の「動力部門」の主な仕事は、工場が安定して操業できるように、電気、水、高圧エアなどを安定して供給すること、工場から出てきた排気や排水を適切に処理して、地域の環境に影響を与えないことです。

ちゃんとやっていて当たり前。
製品をつくっている生産部門と比べたら、動力部門は「縁の下の力持ち」であり、
生産部門が「日なたの部署」だとしたら、動力部門は「日陰の部署」と言われていました。

たとえば、ある工場で勤務していたとき、生産部門から部長が異動してきました。その部長が、「動力部門に異動だなんて、お前何か悪いことでもやったのかって言われちゃったよ」と話しているのを聞いて、私は悲しい気持ちになりました。

私たちが担当していた「工場内の設備の点検・メンテナンス」の外注化を検討するとき、検討資料のタイトルは「無付加価値業務の外注化」でした。それを見たとき、「私たちの仕事って無付加価値業務なの?」とモヤモヤしました。

「収益を上げている部門」と「収益を上げていない部門」というとらえ方から生まれてきた言葉なのかもしれません。
(なんだか仕事と家事のとらえ方に似ていますね)

同じ組織で働く仲間同士でそういう見方になってしまうのは、寂しいと感じました。

そういう言葉を使う職場は雰囲気がよくないし、業績もイマイチです。

実際、プロジェクトXで「社内から日陰の職場と揶揄されていた」というエピソードが紹介されていた会社も、そのときは大成功を収めたものの今は・・・です。

言葉には無意識の思いが乗ります。
言霊と言うけれど、使う言葉で世界はつくられると感じます。

「女性でもできる」
「シニアでもできる」というような「~でも」とか、「高年者の活用」というように、人に対して「活用」という言葉を使うとか、人のことを「コマ」と言ってみたり、「日陰部署」「閑職」「窓際」と揶揄してみたり……。

そういう言葉は、無意識に他人を見下していたり、人を「モノ」扱いしていたりするから出てくる言葉です。

そういう言葉を使わないようにするだけでも職場の雰囲気は変わるのではないでしょうか。

あなたの職場ではどのような言葉が使われていますか。
ぜひ見直してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

それでは、また。


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