失敗やトラブルって、できれば遭遇したくないものですが、実は「最高の教材」でもあります。
めったに起きないことだからこそ、みんなの「共有財産」にして、同じ失敗やトラブルが再発するのを防ぎたいものです。
でも、せっかくの失敗事例、トラブル事例を「記録」として保管していませんか。
今日は、失敗やトラブルを「共有財産」として生かす方法についてお話します。
皆様の職場では、失敗やトラブルが起きたとき、どのように記録していますか。
私が勤めていた会社では、トラブルが起きると「トラブル発生報告書」に内容を記載して保管していました。
報告書に書く内容は次のとおり。
・発生日時
・発生の経緯
・応急措置
・原因と恒久対策
・横展開
A4の紙1枚にまとめたもので、一定の期間保管していました。
だいたい恒久対策のところには、人への「再教育」みたいなことを書いたり、「手順書に追記」という内容を書いていたりしたのですが・・・
正直「形だけ」になっていたりするんですよね。
そして時間が経って、「このときって、こんなだったんだよ」と語れる人もいなくなると、その紙はもう、「ただの記録」になってしまいます。
これって、とてももったいない!
しかも
・6月3日(月)21時頃○○故障が発生
・生産部門にメンテナンスの有無を確認
・・・
のように、箇条書きで時系列に書かれたものを読んでも、当事者でなければ自分事としてとらえることができません。
自分事としてとらえてもらうには、どうすればよいでしょうか。
それは、「ストーリー」にして伝えることです。
そのときの当事者を「主人公」にして、再現ドラマのように文章で書き出すのです。たとえば、こんな風に。
ある日、「冷却水タンク水位低下警報」が発報しました。この警報は、生産装置のメンテナンス時に時折出る警報で、しばらく時間が経つと復旧します。私は「いつものように、生産装置のメンテナンスをしているのだろう」と考えました。それで、生産部の班長にメンテナンスをしているかどうか、電話で確認しました。
『はじめてリーダーになる女性のための教科書』(日本実業出版社)
箇条書きからでは読み取れない情景や当事者の心情なども書いておくのがポイントです。
ストーリーにしておくと、読み手は「自分がその場にいたらどう考えたかな。同じような対応をしたかも・・・」と、「自分事」としてとらえやすくなります。
なぜなら「追体験」できるからです。
実際、失敗事例ばかりを集めた本もあるくらいです。
文章にして残すには、失敗した本人やトラブルに対処した人たちに詳しく話を聞かせてもらう必要があります。
それも、本音で、正直に語ってもらわなければなりません。
つまり、「失敗を許し、正直に話せる関係」であることが大前提となります。
そのうえで、「何があり、何を思い、どうしたのか」を文章にして残していくと、痛い「失敗」も後に続く人たちにとって「貴重な財産」にすることができます。
そろそろ新入社員も仕事を覚えて、いろいろ失敗をする時期かもしれません。
そんなときこそ、「ストーリー」として残すことを試してみてください。
本内容は、新刊『はじめてリーダーになる女性のための教科書』から抜粋したものです。ぜひ本もあわせてご一読くださいませ。
それでは、また。